偏差値65以上の大学に通う僕が、『新・物理入門』をレビューします。
一部の受験生から、強烈に支持される一方。「難しすぎる」「要らない」と批判もされる、賛否両論わかれる参考書です。
「入門書」ではないので、注意してください。
※タイトル詐欺です。
- 始めて物理を学ぶ人
- 数Ⅲを習っていない人
- 物理が苦手な人
には、全くオススメしません。
上記に当てはまる人は、まず『物理のエッセンス』から始めることをオススメします。
>> 薄いけど大丈夫?【物理のエッセンス】のレベルと使い方は?
とはいえ「正しく」使えば、強い味方になるのは間違いない。
僕は東大「不」合格者です。失敗したからこそ分かる、「効率的な」使い方を、お教えします。
『新・物理入門』の魅力について
「自然という書物は、数学の言葉で書かれている」とガリレオは言いました。いや、「自然を数学で表現した」が正しいかもしれません。
自然科学と数学は、切っても切れない関係にあります。
しかし、高校の物理は、数学とは切り離されているのです。
「数学による理解は、レベルが高すぎる」と文部科学省は判断しているのです。
参考:文部科学省の「指導要領」
そこで高校生むけの物理の参考書は、「イメージ」や「直観」による理解にとどまっています。
「なんとなく」理解しているだけで、根本的に理解しているわけでは無いのです。
この記事にたどり着いた鋭いあなたは、薄々、気付いているでしょう。
高校の物理に、どこか「モヤモヤ」を抱えているのでは?
高校物理では、
- 公式を覚える
- それを当てはめる
に終始しています。「公式の当てはめ」という「作業」になりがちです。
でも入試では、「差」をつけなければいけません。大学は、本当に分かっているのかを、試したいのです。
そこで難しい問題では、「理解」してなければキツくなります。
以下の質問に、答えられますか?
答えられないなら、それが「モヤモヤ」の原因です。根本的には、理解していないのです。
↓は数学を使えば、証明が可能です。
・運動量保存・エネルギー保存が、なぜ成り立つのか?
・2体問題について。重心の運動と、重心から見た個々の物体の運動に、分解できることを知っているか?
・単振動について。なぜsinカーブを描くのか?
・ドップラー効果の公式を、証明できるか?
・たくさんある「波の干渉」の公式。計算から導けるか?
・交流について。π/2の位相のズレを、証明できるか?そもそも「位相のズレ」の意味を、理解しているか?
『新・物理入門』を使えば、↑のことが理解できます。
「公式・解法を覚えて、当てはめる」レベルから、1歩進んだ理解。
今まで何をやっていたのか、ハッと気付けます。
「イメージではなく、数式から」、「現象」を理解できます。
以上が『新・物理入門』の魅力です。
苑田先生の、ハイレベル物理との関係性
同じように、「数式による理解」をさせる先生として、東進ハイスクールの苑田先生の授業が有名です。
僕も、苑田さんの授業を受けていました。
が、正直かなり難しく、完全には理解できませんでした。
相当レベルは高いです。
東大理Ⅲに受かった友人が、「難しすぎる」「必要ない」と言っていました。それくらいレベルは高いのです。
『新・物理入門』も教え方は近いですが、苑田さんの授業より簡単です。
レベルは「(苑田さんの)ハイレベル物理 > 『新・物理入門』」です。
デメリット:労力がかかる割に・・
物理だけでなく、数学も英語も、化学だって大事です。入試は物理だけでないことを、忘れないでください。
数学Ⅲが必要である
「大学レベルの数学」は必要ありません。数Ⅲができれば、理解できます。
あくまで高校生用なので、安心してください。
微分方程式がでますが、難しくありません。
※今の数Ⅲ課程では、微分方程式は「参考扱い」になっています。
ただそれでも、数Ⅲが必要なのは厳しいです。
もし高3から数Ⅲを学ぶなら。数Ⅲを勉強 ⇒ 『新・物理入門』という流れになります。
高3なら、夏休みから過去問を解き始めます・・ どう考えても、時間が足りません。
とはいえ、難関大の受験生なら、高2までに数Ⅲを終わらせている人も多いでしょう。であれば、問題ありません。
でも高3から、数Ⅲを勉強する予定なら。『新・物理入門』はあきらめてくださいね。
代わりに、↓記事を参考にしてください。『新・物理入門』を含めて、3つのルートを提案しています。
100%の理解は、不可能である。
2つ、例を挙げますね。
- なぜ屈折率の違う物質の境界、「位相がズレる」のか?
たしか高校生では、理解できなかったはずです。『新・物理入門』を読んでも、直観による理解にとどまります。
- 電磁気も完全には、数式による理解はできない
基本原理は「マクスウェル方程式」にあるようで。これは大学生でも、理解できない人が大半だとか。
高校生にはとうてい、手が出せません。
他にもたくさんあります。
『新・物理入門』はあくまで、高校数学を使うので。解説には限界があります。
でも、「100%分からない」のは仕方ないことです。
だって大学に行ってからも、物理を勉強するのですから。
100%理解できるのなら、大学で勉強することは無くなります。
ある程度、「天下り」的なのは仕方ありません。
数学だって、そうでしょう?
たとえば積分。細っそい長方形を∞に足し合わせたら、求める面積に限りなく近づく・・と習いましたね。
でも長方形と、曲線との間にできる、微妙なスキマ。あの誤差だって、無限に足し合わされれるわけです。
微小項を∞に足し合わせても、0に収束するとは限りません。その証明は、大学レベルです。
実は「積分」だって、天下り的です。完全には理解していないのです。
けっきょく、「公式の当てはめ」になる
たとえば、天体の分野です。
面積速度=一定・・ なぜ2次曲線を描くのか・・
数式から理解したところで、結局やることは一緒です。
「剛体のつりあり」も同じです。高校生が習うのは、「つりあい」だけです。回転の運動方程式は、入試では出題されません。
理解したところで、解答に書くべき「数式」は、一緒です。
「微積を用いた、カッコ良い解答が書けるようになる!」と期待すると、後でガッカリします。
公式に当てはめて、解くことは変わりません。
『新・物理入門』の恩恵が大きい分野と、そうでない分野があるのです。
恩恵が少ないのは、「剛体のつりあい」やケプラー問題。あとは「熱力学」もですね。
熱力学は一部、強烈に解き方が変わる問題もありますが、そう出会いません。
『新・物理入門』は、副読書として使うのがベスト
オススメは、
- 2物体の問題
- 波の干渉
- 電磁誘導
あたりを読んでおくと、「恩恵が大きいかな?」と思います。
- 基礎は『物理のエッセンス』などで、固めておく。
- そして「モヤモヤ」が残る部分だけ、『新・物理入門』を参照する
この勉強法が、効率が良いです。
ここで注意してほしのが、「自分を責めない」こと。
「難しすぎる」と思えば、別に理解できなくても構いません。
周りの受験生も、理解していないのですから。学受験は、競争です。周りに勝てば、受かります。
この参考書を持っている時点で、あなたのレベルは高い。
だから完全には分からなくても、問題ありません。
ガッツリ使いたいなら:『新・物理入門問題演習 』
いや、自分はそれでも、『新・物理入門』を完璧にしたいのだ、という猛者もいるでしょう。
そういった方は、『新・物理入門問題演習 』も、同時に購入してください。
『新・物理入門』に対応する問題集です。並行して問題を解いていく使い方が、オススメです。
問題集としては、さほど難しくありません。
『名問の森』より、はるかに簡単です。『重要問題集』より、簡単かもです。
なので、『新・物理入門問題演習』を終えたら、『名問の森』に進むことをオススメします。
もし時間がなければ、いきなり過去問でもいいです。
『新・物理入門』を使うか、よく考えて!
- 新・物理入門には、手を出さない
- 副読書として使う
- ガッツリ使う
の3つの選択肢が、考えられます。
ここまで読んで、「使うべきか、決めきれない」人も多いでしょう。
そこで方針を示します。
※冒頭でも書きましたが、物理が苦手な人は、迷わず「①使わない」ですよ。
※評判・口コミが知りたい方は、こちらをどうぞ。
みんなの感想(読書メーター) >> 『新・物理入門』
こんな人は、買ってほしい
まず、難関大受験生は、持っておいて損はないです。
1冊 1,000円ちょっとで、参考書の中でも安い部類に入ります。しかも1単元を読むだけでも、効果が高いタイプの参考書。
買わない手は、ありません。
また理工系に進む人も、買ってください。
大学では、『新・物理入門』よりも難しいことを、習います。
そこで、挫折する生徒も多いのだとか。高校生は、イメージと直観による理解。大学生は、数学による理解。
両者のギャップが大きすぎるんですね。とくに「物理は得意だけど、数学は苦手」な人は、大学に行ってから苦労するでしょう。
『新・物理入門』を見て、「うわっ・・ キモ・・」と引いてしまった人は、進路を考え直しても良いかもしれません。
言い換えれば、上記に当てはまらない人は、買わない方がよいです。
こちらの記事も、参考にしてください。
とりあえず、副読書にしておく?
東大「不」合格者の視点からいえば、「副読本」にしておくのが無難だと思います。
受験では、「問題を解いた」人が、合格します。「数式から理解している人」ではなく、「問題を解いた人」が受かるのです。
『新・物理入門』に大きな時間を割くよりも、問題演習を繰り返した方が、効率は良いです。
『新・物理入門』はインプット用の本です。
ある実験によると、「インプット:アウトプット=3:7」である生徒の成績が、最も良かったそうです。
でも『新・物理入門』をガッツリやると、
理解に大きく時間をとられ、アウトプット(演習)に回す時間が少なくなります。
Amazon >>新・物理入門 (駿台受験シリーズ)
東大医学部に受かった友人も、この本を「副読本」として使ていました。
東大医学部に合格するような強者でも、この本をガッツリ使わないのです。
僕ら「フツーの人」は、副読書にしておくのが無難です。
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